遺産分割における特別受益と寄与分

遺産分割の相談を受けました。相続財産は相続税がかからない
額でしたが、分割の仕方でもめていました。


兄が被相続人である母親を20年間面倒をみたので、寄与分
主張しました。

妹は、兄が大学進学のお金や、自宅を新築時に援助をしてもらって
いるので兄の相続分から、その分を差し引いて欲しいと主張しています。

相続税法では3年以内の贈与加算だけ考慮すればいいのですが、
民法では特別受益寄与分も考慮しなければならないのでもう少し複雑です。


民法第903条第1項(特別受益者の相続分)
共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組の
ため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人
相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを
相続財産とみなし、前3条の規定により算定した相続分の中からその遺贈
又は贈与の価額を控除した残額を持ってその者の相続分とする。

民法第904条の2第1項(寄与分
共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、
被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加に
ついて特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において
有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除した
ものを相続財産のみなし、第900条から第902条までの規定により
算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。


相続税法では3年以内の贈与は相続財産に加算されますが、「特別受益」は
期限については規定されていません。

ずっと昔に兄だけが大学進学の資金を出してもらった場合は特別受益となりますが、
その金額が問題です。

最高裁判決で、特別受益として加算する額は、相続開始時の貨幣価値に換算した価額を
もって評価すべきである、という事例があります。
例えば40年前の大学の入学金と授業料があわせて15万円だったとすると、
現在の入学金と授業料で100万円から200万円となるのでしょうか。


また、寄与分について過大に期待される方が多いのですが、単に同居して母親の
面倒を見た、と言うだけでは、親子では当然扶養義務があるので、特別の寄与とは
なりません。

判例では、重い老人性痴呆の被相続人を10年間にわたり看護してきた場合に
寄与分が認められた事例があります。

また、父親の会社を一緒に手伝って大きくしたと言うだけでは、無給又はそれに
近い状態でなければ、寄与分は認められません。


特別受益寄与分は、いずれも相続人だけが対象なので、例えば義父の面倒をみた
お嫁さんには寄与分は認められません。


いずれにしても、特別受益寄与分で遺産分割がまとまらない時は、
税理士としてはこれ以上アドバイスすることは出来ないので、弁護士
さんに相談することをおススメしました。